'08 CBR1000RR (NLRA)


概要

主な変更点

マップモード切替
モード切替用の配線(ECU内部でプルアップされた)をGNDに落とすことで、ユーザが設定したマップがMode1→Mode2と切り替わる。切り替わりのトリガはシフトチェンジ。
Th、Ne値に関して
Fiセッテイング,IGセッティングの各モードで別々に設定可能になった。
Quick Shift
センサ出力直読み(Analogモード)に対応、上下インジェクタの噴射カット、IGの点火カットを個別に設定可。
アンチスピニング:Anti Spinning(AS)
エンジン回転の上昇率でFI,IGに補正を掛け、出力を抑制する。
トラクションコントロール:Traction Control System(TCS)
前後輪の車速の差でFI,IGに補正を掛け、出力を抑制する。
レブリミット
10,000〜14,500r.p.mの間でレブリミットが設定できる。
IG進角値
'07 CBR1000RRと異なり、IGに進角値を入力してもECUが無視して進角無しになる。
フューエルパルス
ECUが演算した結果、燃料消費1ccごとに立ち上がりパルス(0-5V)が出力され、純正メータにラップごとの消費量が表示される。
ピットロードスピードリミット回転制御
ピットロードスピード制限の回転数が2速を基準としたものとなり、ECUが2速と判断した場合は設定回転数で、1速と判断した場合は設定回転数の1.18倍で、3速と判断した場合は設定回転数の0.85倍で、それぞれ回転制御が入るようになった('08/4/15判明)。

必要なハードウェア

フロント車速センサ
トラクションコントロールの制御には必須で、フロント車速のパルスが入力されていないと、ECUがフェイル(※1)する。

※1:車速関連でECUがフェイルすると、ECUは6速固定モードになるため、ギア別の出力抑制モードが働かなくなり、マップモードの切り替えもできなくなる。

変更に伴う注意点

マップモード切替
切り替わりのトリガがシフトチェンジなので、鈴鹿の2コーナー〜S字〜ダンロップ登りなど、チェンジを行わない区間で切り替えスイッチを操作してもマップが切り替わらないので注意が必要。
Quick Shift
従来のシフタのユニット(38300-NL9-000)を使用する際は、ハーネスの加工をし、ECUの設定でSwitch入力にする必要があります。Wiring
シャーシダイナモ
フロント車速パルスが入力されないので、上記のフロント車速センサを取り付けないときと同様にECUがフェイルする。
フューエルパルス
演算結果であって、流量計など用いた数値ではありませんので、実消費量とは誤差があります。
その誤差はスロットルの開け方などにより変動するため、計量燃費との相関を取ることで、ある程度燃費の目安として使用できます。
E2Pファイル
従来は「E2Pファイル=ECUに書き込まれるデータ」であったが、NLRAでHRC純正ツールを使用している場合、PCに保存されるE2PファイルはECUに書き込まれるデータの一部しか反映されていない。HRC純正ツールでECU書き込み時に生成されるテンポラリファイル(.TMP)が、実際にECUに書き込まれるデータになる。

ECU-Tool 海賊版での対応

マップモード

モード切替

 マップモードの切り替えが有効な箇所では、Modeオプションボタンでマップモードを切り替えて表示します。
 [1→2]というコマンドボタンで、表示箇所のMode1のデータをMode2にコピーします。
 [2→1]というコマンドボタンで、表示箇所のMode2のデータをMode1にコピーします。
 表示箇所とは、Fi Map編集モードではFi Mapだけ、IG Map編集モードではIG Mapだけという意味です。

 このコマンドボタンをCtrlキーを押しながらクリックすると、[1≫2]または[2≫1]という表示になり、
 [1≫2]というコマンドボタンでは、すべてのMode1のデータをMode2にコピーします。
 [2≫1]というコマンドボタンでは、すべてのMode2のデータをMode1にコピーします。

 また、このコマンドボタンを右クリックするかShiftキーを押しながらクリックすると、[1⇔2]という表示になり、表示箇所のMode1のデータとMode2のデータを入れ替えます。
 そして、このコマンドボタンをShiftキー+Ctrlキーを押しながらクリックすると、すべてのMode1のデータとMode2のデータを入れ替えます。

 Modeオプションボタンの左にある Mode と書かれているラベルをクリックすると、表示箇所でMode1とMode2で異なる部分が緑色になり、
マップモードがMode1のときは、値が異なるMode2のデータを、
マップモードがMode2のときは、値が異なるMode1のデータを、
それぞれ表示します。Mode1、Mode2が同じデータの場合は、Modeオプションボタンが青色に変化します。

差異パート表示

 また、このラベルを右クリックすると、Mode1とMode2の全データを比較して、どの箇所に違いがあるのかをメッセージボックスで表示します。

余談

 マップモード変更ができ、なおかつ多様なセッティング変更ができるからといって、セッティングに利用する目的において、Mode1とMode2であまりに違う設定をするのは得策とは言えません。違いを確認したい最小限の範囲でMode1とMode2に違いを持たせ、実走で切り替えて確認すべきです。IGもFIもGR、AS、TCSも異なるようなMode切り替えでは、何が影響しているかさえ分からないばかりかライダーを危険にさらしますので、そういった使い方は避けるべきです。
 耐久レースなどで、ライダーによってMode切り替えを使う場合は、かなり異なった設定になるかもしれません。その際は、切り替えスイッチにわかりやすい目印を付けたり、Mode切り替え用信号線をモニターして、なんらかのインジケータによってライダーにModeを伝えるなど、切り替えミスを防ぐ手段が必要になってくると思います。

レブリミット

 うす緑色のスピンボタンでレブリミットを変更します。


IG進角値

 ECUが進角値を無視するので、対応できません。cfgにIGAdvance=1の設定することで、見かけ上+5°まで進角値の入力ができますが、その値をECUに書き込んだところで無意味です。
今後、進角が許容されるECUの登場に期待するしかありません。

フューエルパルス

 設定項目ではないため、ECU-Tool海賊版での対応はありません。
フューエルパルスを、HRCロガーでロギングするを参照

ピットロードスピードリミット回転制御

2速基準での計算方法に変更。

省略書き込み

 ECUの書き換えデータが大幅に増加したため、ECUのデータ読み書きに時間が掛かるようになりました。それに対応してデータの省略書き込みができるようになっています('06CBR600RR 及び '07CBR1000RR 以降の機種)。
 省略書き込みとは、ECUに書き込んだデータをプログラム内部に記憶しておいて、マップの変更された部分だけをECUに書き込み、ベリファイを行うため、マップ書き換えの時間を短縮できる方法です。しかし、書き換えたECUの個体判別は行っていない(機種判別は行いますが)ので、ECU-Tool 海賊版を複数立ち上げ、複数のマシンのマップを書き換える際などは注意が必要です。
 また、プログラム終了時には記憶を破棄します。つまり
○プログラムを起動して、当該マシンのECUからマップを読み込む
○ファイルを読み込んで、当該マシンのECUにマップを書き込む
○[編集]メニューの「このマップをECUから読んだことにする」をクリックする
 のいずれかの作業を行った段階で、省略書き込みが可能となります。

インストールフォルダの、ECU-Tool.cfgというテキストファイルに(存在しない場合は作成し)、

WriteOmission=1

と書いて保存し、ECU-Tool海賊版を起動すると省略書き込みが有効になります。
[設定]メニューから省略書き込みを行うかどうか選択できます。

ベリファイ省略

 上記理由と同じで、ECUに書き込んだデータのベリファイを省略できるようになっています('08 CBR1000RR)。
 '08 CBR1000RR用HRC純正ツールはベリファイ無しの動作をします。

インストールフォルダの、ECU-Tool.cfgというテキストファイルに(存在しない場合は作成し)、

NoVerify=1

と書いて保存し、ECU-Tool海賊版を起動するとベリファイ省略が有効になります。
[設定]メニューからベリファイを省略するかどうか選択できます。

詳細表示

 AS、TCSにおいて、そのセッティング内容がNone,Little,More,Mostというような抽象的な表現なので、いったいどんな設定を変更しているのか分かりません。以下の方法を行うことで、セッティング内容の詳細を表示できるモードになります。

インストールフォルダの、ECU-Tool.cfgというテキストファイルに(存在しない場合は作成し)、

ShowDetail=1

と書いて保存し、ECU-Tool海賊版を起動すると詳細表示が有効になります。

エキスパートモード

 AS、TCSにおいて、詳細表示された設定値を変更できるモードです。
詳細はエキスパートモードに関してを読んでください。


ECU-Tool メニューページ