Type5 サス

Type5(ユニットプロリンク)

各点説明

O
ピボット(原点)
A
リンクプレートとサスペンションの結合部
B
リンクプレートとリアフォークの接合部
C
リンクプレートとロッドの接合部
D
ロッドとシャーシ部との接合部
E
リアフォークのサスペンションマウント部
F
点Bから線分OG(リアフォークセンター線)に下ろした垂線の足
G
リアアクスル
J
点Eから線分OG(リアフォークセンター線)に下ろした垂線の足
S
原点から直線CDに下ろした垂線の足
T
点Bから直線AEに下ろした垂線の足
U
点Bから直線CDに下ろした垂線の足
t
リアフォーク(OG)とx軸のなす角

各点の添字x、yはそれぞれのx座標とy座標。
座標は直交座標でピボットを原点としマシン水平後方がx軸の正、路面への鉛直線方向がy軸正。

f1
アクスル荷重
f2
リアサス反力
f3
ロッドの荷重
f4
リアフォークとリンクプレート接合部の内部応力
f5
ピボットが受ける荷重

各力の添字x、yはそれぞれの力のx軸方向とy軸方向の分力。

既知の値

OJ,EJ:リアフォークに対するマウント部座標
D(Dx,Dy):シャーシ側リンク取り付け位置座標
AB,BC,AC:リンクプレート三辺の長さ
CD:テンションロッド長
OG:リアフォーク長
OF,BF
Gy0:リアアクスルの初期位置(mm)
k:スプリングレート(kgf/mm)
ini:プリロード(mm)

求める値

リアアクスルが j mmストロークしたときの
 ratio:リンクレシオ
 stroke:サスストローク
 f1(f1x,f1y):アクスル荷重
 f2(f2x,f2y):サス反力
 f3(f3x,f3y):ロッド張力
 f4(f4x,f4y):点B荷重
 f5(f5x,f5y):ピボット荷重

考え方

ピボット(原点O)を瞬間中心として考える。
a = RL(C,D,O):点Cから点Dを見たときの原点Oの位置
とすると、
 f1 * Gx = a * f3 * OS ───@
が成り立つ。

次に点Bを瞬間中心として△ABCを考える。
b = RL(B,A,E) * RL(B,C,D)
とすると、
 f3 * BU = b * f2 * BT
 が成り立ち、f3について解くと
  f3 = b * f2 * BT / BU ───A
これを@式に代入して
 f1 * Gx = a * b * f2 * BT * OS / BU
よって
 リンクレシオ:ratio = f1/f2 = a * b * (BT * OS) / (BU * Gx)

実際に計算する

Gy = Gy0 - j
t = Asin(Gy/OG)
Gx = OG * cos(t)

点F(Fx,Fy)を求める

Fx = OF * cos(t)
Fy = OF * sin(t)

点B(Bx,By)を求める

∠FOB = Atan(BF/OF)
OB = Sqr( BF^2 + OF^2 )
よって
Bx = OB * cos(t + ∠FOB)
By = OB * sin(t + ∠FOB)

点B(Bx,By)を中心とし半径BCの円と点D(Dx,Dy)を中心とし半径CDの円の交点C(Cx,Cy)

Cx = enkoten(1,n,Bx,By,BC,Dx,Dy,CD)
Cy = enkoten(2,n,Bx,By,BC,Dx,Dy,CD)

点B(Bx,By)を中心とし半径ABの円と点C(Cx,Cy)を中心とし半径ACの円の交点A(Ax,Ay)

Ax = enkoten(1,n,Bx,By,AB,Cx,Cy,AC)
Ay = enkoten(2,n,Bx,By,AB,Cx,Cy,AC)

それぞれ2値を取るため、計4つの解が存在するので、うちひとつを選択する。

点E(Ex,Ey)を求める

∠JOE = Atan(EJ/OJ) EJはスイングアームから路面方向が正
OE = Sqr( EJ^2 + OJ^2 )
よって
Ex = OE * cos(t + ∠JOE)
Ey = OE * sin(t + ∠JOE)

この時サス長は
AE = Sqr((Ax-Ex)^2 + (Ay-Ey)^2)
となり、j=0 の時のサス長(サス自由長)を AE0 とする。

よってサスストロークは
stroke = AE0 - AE

二点C、Dを通る直線と原点Oの距離

OS = kyori_b(O,C,D)

二点A、Eを通る直線と点Bの距離

BT = kyori_b(B,A,E)

二点C、Dを通る直線と点Bの距離

BU = kyori_b(B,C,D)

各点の位置関係

a = RL(C,D,O)
b = RL(B,A,E) * RL(B,C,D)

レシオを求める

上記より
ratio = a * b * (BT * OS) / (BU * Gx)
が計算される

次に荷重計算

サス荷重

f2 = k * (stroke + ini)
f2x = f2 * ((Ax-Ex) / AE )
f2y = f2 * ((Ay-Ey) / AE )

アクスル荷重

f1 = f2 * ratio
f1x = 0
f1y = -f1

テンションロッド荷重

A式より
f3 = b * f2 * BT / BU
f3x = f3 * ((Dx-Cx) / CD )
f3y = f3 * ((Dy-Cy) / CD )

リンクプレート(△ABC)の釣り合いを考えると
f2x + f3x + f4x = 0
f2y + f3y + f4y = 0
よって
f4x = -(f2x + f3x)
f4y = -(f2y + f3y)
f4 = Sqr(f4x^2 + f4y^2)

全体の釣り合いを考えると、
f1x + f3x + f5x = 0
f1y + f3y + f5y = 0
なので、

ピボット荷重

f5x = -f3x
f5y = f1 - f3y
f5 = Sqr(f5x^2 + f5y^2)

検証

リンク比に対する検証

 Type3と同様。


メリット?

 このレイアウトのメリットはいったいなんぞや?
 エンジンを後方排気としたとき、エキパイやチャンバーのレイアウト自由度が増すという以外に、このリンクレイアウトのメリットがわからない。
 従来のバネ上、バネ下という概念はさておき、少なくともリア周りの慣性重量はとんでもなく増加するので、サスの追従性は悪化すると思う。
 サスユニットからの反力をフレームで直接受け止めていないため接地感は得られないはずだし、ライダーがサスユニットの慣性力から感じるいわゆるサスの動きも、サスユニットの運動方向が従来のものと比べると直立、もしくは後傾してしまうので、ライダーにはかなり違和感があるはずだ。トラクションは無いけど、突き上げ感ばかり目立つとか……。


その他のレイアウト

Type5-2

 RC211Vの開発車両や、NSR250(RS250RW?)の'04モデルに装着されているサスも、このType6に分類される。

 サスユニットの運動方向が従来型と同じ方向に近づいているため、ライダーがサスの動きを感じやすくはなるだろうが、接地感や慣性重量の面では改善されないだろうなぁ。

 ミック怪我のために流行したハンドリアブレーキや、すっかり廃れたピボットレスのことを考えると、2007年頃まではこのレイアウトを引きずるのかナ?>HONDA



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