Type6 サス

Type6

 CBR1000RR(HRCワークス車)、RC211V後期型、DUCATIなど

各点説明

O
ピボット(原点)
A
リンクプレートとサスペンションの結合部
B
テンションロッドとリアフォークの接合部
C
リンクプレートとロッドの接合部
D
リンクプレートとシャーシ部との接合部
E
リアフォークのサスペンションマウント部
F
点Bから線分OG(リアフォークセンター線)に下ろした垂線の足
G
リアアクスル
J
点Eから線分OG(リアフォークセンター線)に下ろした垂線の足
S
点Dから直線BCに下ろした垂線の足
T
原点から直線BCに下ろした垂線の足
U
点Dから直線AEに下ろした垂線の足
V
原点から直線AEに下ろした垂線の足
t
リアフォーク(OG)とx軸のなす角

各点の添字x、yはそれぞれのx座標とy座標。
座標は直交座標でピボットを原点としマシン水平後方がx軸の正、路面への鉛直線方向がy軸正。

f1
アクスル荷重
f2
リアサス反力
f3
ロッドの荷重
f4
シャーシ部とリンクプレート接合部の応力
f5
ピボットが受ける荷重

各力の添字x、yはそれぞれの力のx軸方向とy軸方向の分力。

既知の値

OJ,EJ:リアフォークに対するマウント部座標
D(Dx,Dy):シャーシ側リンク取り付け位置座標
AC,CD,AD:リンクプレート三辺の長さ
BC:ロッド長
OG:リアフォーク長
OF,BF
Gy0:リアアクスルの初期位置(mm)
k:スプリングレート(kgf/mm)
ini:プリロード(mm)

求める値

リアアクスルが j mmストロークしたときの
 ratio:リンクレシオ
 stroke:サスストローク
 f1(f1x,f1y):アクスル荷重
 f2(f2x,f2y):サス反力
 f3(f3x,f3y):ロッド荷重
 f4(f4x,f4y):シャーシ部とリンクプレート接合部の応力
 f5(f5x,f5y):ピボット荷重

考え方

ピボット(原点O)を瞬間中心として、リアフォークに関して考える。
a = RL(E,A,O):点Eから点Aを見たときの原点Oの位置
b = RL(C,B,O):点Cから点Bを見たときの原点Oの位置
とすると、
 f1 * Gx = a * (-f2) * OV + b * (-f3) * OT ───@
が成り立つ。

次に点Dを瞬間中心として△ACDを考える。
c = RL(D,A,E) * RL(D,C,B)
とすると、
 f3 * DS = c * f2 * DU
 が成り立ち、f3について解くと
  f3 = c * f2 * DU / DS ───A
これを@式に代入して
 f1 * Gx = a * (-f2) * OV - f2 * b * c * DU * OT / DS
  = -f2 * (a * OV * DS + b * c * DU * OT) / DS
よって
 リンクレシオ:ratio = f1/f2 = -(a * OV * DS + b * c * DU * OT) / (DS * Gx)

実際に計算する

Gy = Gy0 - j
t = Asin(Gy/OG)
Gx = OG * cos(t)

点F(Fx,Fy)を求める

Fx = OF * cos(t)
Fy = OF * sin(t)

点B(Bx,By)を求める

∠FOB = Atan(BF/OF)
OB = Sqr( BF^2 + OF^2 )
よって
Bx = OB * cos(t + ∠FOB)
By = OB * sin(t + ∠FOB)

点B(Bx,By)を中心とし半径BCの円と点D(Dx,Dy)を中心とし半径CDの円の交点C(Cx,Cy)

Cx = enkoten(1,n,Bx,By,BC,Dx,Dy,CD)
Cy = enkoten(2,n,Bx,By,BC,Dx,Dy,CD)

点C(Cx,Cy)を中心とし半径ACの円と点D(Dx,Dy)を中心とし半径ADの円の交点A(Ax,Ay)

Ax = enkoten(1,n,Cx,Cy,AC,Dx,Dy,AD)
Ay = enkoten(2,n,Cx,Cy,AC,Dx,Dy,AD)

それぞれ2値を取るため、計4つの解が存在するので、うちひとつを選択する。

点E(Ex,Ey)を求める

∠JOE = Atan(EJ/OJ) EJはスイングアームから路面方向が正
OE = Sqr( EJ^2 + OJ^2 )
よって
Ex = OE * cos(t + ∠JOE)
Ey = OE * sin(t + ∠JOE)

この時サス長は
AE = Sqr((Ax-Ex)^2 + (Ay-Ey)^2)
となり、j=0 の時のサス長(サス自由長)を AE0 とする。

よってサスストロークは
stroke = AE0 - AE

二点A、Eを通る直線と原点Oの距離

OV = kyori_b(O,A,E)

二点A、Eを通る直線と点Dの距離

DU = kyori_b(D,A,E)

二点C、Bを通る直線と原点Oの距離

OT = kyori_b(O,C,B)

二点C、Bを通る直線と点Dの距離

DS = kyori_b(D,C,B)

各点の位置関係

a = RL(E,A,O)
b = RL(C,B,O)
c = RL(D,A,E) * RL(D,C,B)

レシオを求める

上記より
ratio = -(a * OV * DS + b * c * DU * OT) / (DS * Gx)
が計算される

次に荷重計算

サス荷重

f2 = k * (stroke + ini)
f2x = f2 * ((Ax-Ex) / AE )
f2y = f2 * ((Ay-Ey) / AE )

アクスル荷重

f1 = f2 * ratio
f1x = 0
f1y = -f1

テンションロッド荷重

A式より
f3 = c * f2 * DU / DS
f3x = f3 * ((Bx-Cx) / BC )
f3y = f3 * ((By-Cy) / BC )

リンクプレート(△ACD)の釣り合いを考えると
f2x + f3x + f4x = 0
f2y + f3y + f4y = 0
よって
f4x = -(f2x + f3x)
f4y = -(f2y + f3y)
f4 = Sqr(f4x^2 + f4y^2)

全体の釣り合いを考えると、
f1x + f4x + f5x = 0
f1y + f4y + f5y = 0
なので、

ピボット荷重

f5x = - f4x
f5y = f1 - f4y
f5 = Sqr(f5x^2 + f5y^2)

検証

 Type3と同様。


その他のレイアウト

DUCATI

 DUCATIの最新機種に装着されているサスも、このType6に分類される。
 点Eと点Bが同軸にあるのが特徴。

 いわゆるユニットプロリンクの中では、このレイアウトがいちばん接地感も得られ、ライダーのフィーリングもダイレクトなものになるはず。
 ただDUCATIの市販状態では、あまりにリンクレシオが立ち上がりすぎているので、レースやスポーツライディングにはあまりにも不向きだ。100kgほどの体重の人間が二人乗りして200km/hで高速を流し、路面のギャップでもフルボトムにしない仕様ということだと思われる。当然リンクを見直してやれば、かなり素性のいいサスになるはず。




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